賞与の支給について

退職金関係のお話が続きましたので今回は賞与についてです。
賞与を支給する際の手続き方法や法人の役員に対する支給についてご紹介させて頂きます。





ボーナスって嬉しいですよね。
何かと物入りな年末の臨時収入であったり、子供の夏休みに備えての軍資金であったり、お金の必要な時期にお給料以外に追加でもらえるととても助かります。たとえ差し迫った事情がない場合でも、住宅ローンやクレジットカード、奨学金返済にまで「ボーナス払い」が存在しますし、各種積立でも「ボーナス月増額」なんて設定ができたりもします。さらには支給時期が近付いてくると公務員のボーナス額や上場企業の平均額が公表されたりと、ボーナスは「あったら嬉しい」ではなく「ないと悲しい」ものである気分になってきます。

経営側としては毎年定期的に支給するのは苦しいものがあるかと思いますが、確実に従業員のモチベーションにつながると思いますので是非ご検討ください。



賞与について


さて、それではどういったものが「賞与」となるかと言いますと、「毎月お給料を支給している相手に毎月のお給料以外で支給したもの」をいいます。

ですので、夏・冬に支給しなければならないと決まっているわけではありませんし、夏・冬しか支給してはいけないと決まっているわけでもありません。当年の利益が確実視される決算時期に支給する会社もありますし、繁忙期が終わった後に労いの意味で支給する会社もあります。

ただし、年4回以上支給する場合は社会保険の手続きが変更になりますのでご注意ください。



賞与を支給する場合


では、いざ賞与を10万円支給しようと思っても、残念ながら従業員の手には10万円はわたりません。勘違いされる方もいらっしゃるのですが、賞与からもいろいろと天引きすべきものがあるのです。

毎月のお給料と同じく健保・厚生・雇用保険・源泉所得税を計算し、天引きする必要があります。これらの計算はお給料とはちょっと異なっており、賞与独自のものとなっています。


給与
項目
賞与
毎年4~6月の支給実績によって「標準報酬月額」が決定し、それを元に9月(又は10月)から1年間はお給料額の変動に関わらず定額。上限額あり
(ただし、昇給などで「標準報酬月額」から乖離した状態が連続するときは変更手続きが必要)
健保・厚生
賞与支給額に一定割合を乗じて計算する。上限額なし
当月の給与支給額に一定割合を乗じて計算する
雇用保険
賞与支給額に一定割合を乗じて計算する
源泉徴収税額表に従って、当月の支給額と扶養人数から算出する
源泉所得税
前月のお給料額と扶養人数から賞与に乗ずべき率を算出し、それを賞与支給額に乗ずる
市町村から送付される特別徴収額の決定通知書に従って6~5月のお給料からそれぞれ天引きする
住民税
天引き不要


H30年11月現在ですと、健保・厚生と雇用保険だけで15%以上天引きされてしまいます。10万円を支給しても従業員のわたせる金額は8万円ちょっとになります。しかし、だからといって天引きしないわけにもいきません。もし従業員に10万円の現金が入った封筒を渡したいと思ったら…その際は手取額が10万円になるように逆算して支給額を決める必要がでてきます。



賞与を支給したら


賞与は支給して終わりではありません。後処理が待っています。


まずは日本年金機構に対し「被保険者賞与支払届」を提出する必要があります。

健保・厚生を自動引落にしている会社は多いかと思いますが、あの金額はどうやって決まっているかご存知ですか?毎年7月に「算定基礎届」を提出することにより「標準報酬月額」が決定し、その決定した額に従って自動引落がされています。つまり、何も手続きを行わないと給与天引き分しか自動引落されないことになります。

年金機構はそれぞれの会社が賞与を支給したか、いくら支給したかを自発的に知る術がありません。ですので、会社側が賞与をいくら支給したよと届出を行わないと、せっかく従業員から天引きした保険料を納付できないことになります。

賞与を支給した日から5日以内に「被保険者賞与支払届」を提出する必要がありますので忘れずに手続きを行ってください。


さらに、源泉所得税の納付も必要です。

源泉所得税の納付書には給与天引きした税額を記載する行のすぐ下に賞与の税額を記載する行があります。納付期限は給与と同じく支給日の翌月10日まで(納期の特例を採用している場合は次の納付日)となっておりますので忘れずに支給してください。


これらのお金は「従業員から預かったお金」ですので、うっかり納付忘れをした場合の罰則は税金未納よりも数段厳しくなっています。自発的に手続きを行わないと納付できませんので処理漏れにご注意ください。



役員に対する賞与について


こちらも誤解の多い項目です。役員は賞与をとれない、そう思い込んでおられる社長さんもいらっしゃるのではないでしょうか?

役員に対してであっても賞与を支給することは可能です。ただし、従業員に支給するものと異なり、その支給額や支給時期を予め税務署に届け出ておく必要があります。つまり、今年はよく儲かっているから賞与を多めにもらおう、今年はちょっと厳しいから賞与をもらうのはやめておこう、そんな恣意的な運用はできないということです。

しかし逆に考えれば、安定した利益を出せている会社であればある程度の予測をつけて支給額を決定することは可能です。何かと年末にお金が欲しいと思うのは従業員に限ったことではありませんから。

また、たとえ業績が上下していようとも、業績に関係なく支給することを決めてしまうこともできます。毎月の役員報酬は一年間変更できませんので業績に関係なく最初に決めた額を払い続けますよね?それと同じく賞与も支払うものだと決めてしまえばいいのです。年間で総額いくらを報酬としてもらいそれをいつどれだけもらうのか、というだけの話です。

あるいは、賞与の届出は基本的に決算後に行うものですので、役員=株主の特権を活かして「前年度の実績に応じて当期の支給額を決定する」等のマイルールを決めてしまうのも有効です。もしも今年に利益がでなければ大赤字じゃないか!と思われるかもしれませんが、2年通期で考えれば合算後利益額は同じになりますし、当期の欠損金は繰越を行い翌年度以後の利益と相殺すれば大丈夫です。第三者株主が多数存在する大企業では株主に責められてボーナス支給が難しいですが、社長が大株主であることが多い中小企業でしたら誰にも反対されず支給できます。


もちろん経営判断として賞与をとらないというのは戦略としてアリなのですが、もし、賞与をとりたいと思われるのでしたら一度担当までご相談ください。金額や手続き方法などを含めご説明させて頂きます。

コメント

このブログの人気の投稿

第66回ゴルフコンペ結果のご報告

第67回 新・岡会計ゴルフコンペの結果