退職金規定をつくりませんか?

8月号、9月号と役員・従業員・個人事業主の退職金準備のお話をさせていただきました。
今回は、いざ退職金を支払うにあたっていったいどう支払えばいいのか、というお話をさせていただきます。




従業員の退職金支給の基準


そもそも、労働基準法の観点でいえば、退職金の支給というのはあくまで経営者の恩情であって法的に規定されているものではありません。支給しないという選択肢もあるのです。

しかし、従業員目線で見てみると仕事内容や給与等が同条件なら求人票に「退職金あり」と記載されている企業に応募したいと考えるのもまた事実です。従業員がより長く同一企業で働きたいと思えるのも、退職金が勤続年数に依って計算されるからです。

さて、では現実にはどうかというと、およそ約25%の企業、主に中小企業で退職金規定が制定されていないそうです。もちろん規定がなくとも退職金を支給することはできます。退職に際して金一封を支給する、まさしく社長の恩情ですね。しかし、明確な規定がないからこそ、支給した方がいいのか、いくら支給すればいいのかと頭を悩ませることになります。中小企業では職員の退職が数年に一度というのが珍しくありませんので個々人の条件が違いすぎて「前例に倣う」ことも容易ではありません。

退職金規定を定めてしまえば従業員の退職のたびに頭を悩ませることはありません。求人票にも箔がつきます(ちなみに、ハローワークでは「退職金制度あり」の企業のみの絞り込み検索が可能です。制度なしの会社は見てももらえない可能性があります)。従業員にとっては安心感につながります。

しかしメリットばかりではありません。規定を定めるということはそれに従わなければならないということです。今年は経営が厳しいから…そんな理由で支給しないなんてことはできません。こんな大金払えないよ!なんて言ってもまけてもらえません。従業員を雇ったその日から、計画的に準備を行うことが必要です。

準備の方法としては9月号でご紹介した中退共や生命保険契約を活用する方法があります。こちらにつきましては今回は割愛させていただきますが、ご相談いただけましたらご一緒にベストな方法を検討させて頂きます。


さて、退職金規定を作ってみようと思ったならば、どう作成すればいいでしょうか。

退職金の支給に関しての義務はありませんが、規定の作成方法については労働基準法によって定められています。

つまり、

誰に退職金が支払われるのか
金額はどのように決定されるか
計算方法
支給方法
いつ支払うのか

といったことを定め記載しなければならないとされています。


①について。
例えばパートさんには支給しない、勤続○年以下には支給しない、定年後再雇用の者には支給しない、などを定めることができます。懲戒解雇の場合には支給しない等を定めておくのも重要です。

②について。
会社都合(リストラ等)や就業不能な傷病、死亡、自己都合、懲戒の場合等退職には様々な理由があります。そのそれぞれについて、どう計算するかの決定が必要です。例えば、自己都合退職の場合は満額の7割支給、といった具合です。

③について。
基本給のみを参考にするのか手当はどうするか。勤続年数による係数を採用するのか単純に年数のみで計算するのか。役職があった場合は?勤続年数の端数はどうしたら…そんなことも決めておく必要があります。

④について。
現金手渡し、指定口座に振り込み、小切手など。もし従業員本人が死亡した場合は誰に渡すのかも問題です。

⑤について。
退職後〇日以内に支給する、と決めておかないとせっかちな元従業員から不払いだと責められかねません。

「その規定を読んだ誰が計算しても同じ額になるように」記載することが肝心です。きっちりと細かいところまで決めるのは従業員のためでもありますが会社のためでもあるのです。



ネット上にはモデル規定がゴロゴロと転がっています。しかし各会社によって事情は様々ですし、手当や雇用形態に関する考え方も異なります。弊グループには社会保険労務士もおりますので、作成に悩まれた際は是非ご相談ください。




役員の退職金支給の基準


従業員への退職金支給に法的義務がないように、もちろん役員への退職金支給についても義務はありません。しかし、長年役員として会社に貢献してきたのですから最後に是非退職金をもらいたいのが人情です。また、役員退職金を支払うことで多大な利益に依る税金を節税する、中小企業に多い役員貸付金を清算する原資とする、等も狙えます。

さて、それでは役員退職金はいったい幾ら支給できるのでしょうか?


従業員への退職金支給については基本的にすべて経費(損金・必要な経費)です。しかし役員についてはそうもいきません。なぜなら役員は自分が貰う退職金の金額を自分が決めることができるからです。大株主兼社長がその気になれば、会社が傾く額を退職金とすることもできるのです。そのため、法人税法において、役員退職金につき損金に算入できる(税金の計算上経費にできる)限度額というものが定められています。


法人税法ではどのように定められているのでしょうか?


法人税法施行令
(過大な役員給与の額)
第七十条 法第三十四条第二項(役員給与の損金不算入)に規定する政令で定める金額は、次に掲げる金額の合計額とする。
一 省略
二 内国法人が各事業年度においてその退職した役員に対して支給した退職給与(法第三十四条第一項又は第三項の規定の適用があるものを除く。以下この号において同じ。)の額が、当該役員のその内国法人の業務に従事した期間、その退職の事情、その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する退職給与の支給の状況等に照らし、その退職した役員に対する退職給与として相当であると認められる金額を超える場合におけるその超える部分の金額
 

「相当であると認められる額」としか記載されていません。つまり、明確にこう計算しなさい!という方法は存在しないということです。


そこで、一般的には以下の算式を使用して計算されることが多いようです。


最終役員報酬月額 × 役員在任年数 × 功績倍率


功績倍率は一般的には1~3倍を用いられることが多く、その役職に依る(例えば、代表取締役は3倍、平の取締役は1倍等)ことが多いようです。


しかしこれはあくまで「税法上損金として算入できる額」の目安です。ちょっと過大に税金を支払うことになろうが退職金としてまとまったお金が欲しい!と思われるのでしたらそれも選択肢の一つです。

ただし、それらはあくまで同族会社内で役員は親族のみで後継者も親族、といった場合です。役員や株主に利害背反する人物がいるなら待ったがかかるでしょうし、会社が瓦解するきっかけにもなりえます。その様な事態を避けるためにも退職金規定はあります。

従業員の退職金の項でも述べましたが、退職金規定を作成するということは退職金を支給しなければならないということです。逆に言えば、規定さえあれば自分が退職するときにどんな反対があろうとも退職金をもらうことができるということです。利害が対立しそうな構造の会社においては是非規定の作成をお勧めします。




規定作成のメリット・デメリット


何度か述べましたが、規定を作成するということは支給が義務付けられるということです。それは従業員・役員保護にもつながりますが、会社経営が切羽詰まっている中で更なる出費を要求される可能性ともなりえます。

しかし、規定が存在すれば従業員の安心感となりますし、役員側も支払いを受ける権利を得られます。また、その金銭支給は「退職金である」と明確に定義づけできることにもなります。


あまり知られてはいないのですが、退職金にも所得税・住民税は課税されます。給与・賞与とは別計算であること、免税範囲が広いことから、実際に税金を支払うことはレアケースです。つまり、会社から100万円もらっても、それが賞与なのか退職金なのかで支払う税金の額が全く異なるということです。

ここで問題なのですが、もし退職金が「賞与ではないか」と税務署に疑われた場合はどうなるのでしょう。給与・賞与用の高額な税金が課されますし、役員賞与の場合は経費にもできません。踏んだり蹴ったりです。そうならないためにも、あらかじめ規定を作成しておくことが必要なのです(もし規定を作成する前に支払う場合は、従業員とは覚書の締結を、役員の場合は臨時株主総会議事録を用意しておいた方が良いでしょう)。

規定を作成することは何重もの意味で会社を守ることとなります。



支給した方がいいんだろうな、きちんと取り決めた方が良いんだろうな。そんな風に、なんとなく良くわからないからと放りっぱなしになっていませんか?求人難のご時世でもあります。きっちりと規定を作成してみませんか?

弊グループでは税金面から税理士が、労働基準法面から社労士がお手伝いさせていただきます。是非一度ご相談ください。

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